あ行
ライソゾームの中で働く酵素の一つで、ムコ多糖(グリコサミノグリカン)のうちデルマタン硫酸とヘパラン硫酸を分解します。
ムコ多糖症Ⅱ型では、イズロン酸-2-スルファターゼの欠損、またはその働きが弱いことによりデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が細胞の中にたまり、さまざまな症状が生じます。遺伝に関わる悩みや不安、疑問などをもたれている方々に、臨床遺伝専門医あるいは認定遺伝カウンセラー®が正確な医学的情報をわかりやすくお伝えし、理解していただけるようにお手伝いします。
その上で、相談者が自らの力で医療技術や医学情報を利用して問題を解決していけるよう、心理面や社会的な側面も含めて支援を行います。
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細胞の核の中には、22対(44本)の常染色体と、1対(2本)の性染色体、合わせて23対(46本)の染色体があります。
染色体は二重らせん構造のDNAで構成されていて、DNAの上のタンパク質をつくる情報をもった一部分を、遺伝子といいます。
ムコ多糖症ではライソゾームの中にムコ多糖(グリコサミノグリカン)がたまりますが、ウロン酸はムコ多糖を構成する成分の一つです。ムコ多糖は、ウロン酸とアミノ糖の組み合わせによって種類が決まります。
ムコ多糖症でたまるムコ多糖を構成するウロン酸として、グルクロン酸とイズロン酸があります。
ムコ多糖症が疑われたとき、一次検査として尿の中にウロン酸がどれくらい排泄されているかを調べることがあります。か行
角膜は眼の瞳孔と虹彩を覆う透明な組織で、水晶体とともにレンズの役割を果たしています。
ムコ多糖症ではムコ多糖(グリコサミノグリカン)が角膜にたまることにより、角膜混濁をおこすことがあります。角膜混濁が進行すると、視力低下を認めることもあります。
角膜混濁はムコ多糖症Ⅰ型、Ⅳ型、Ⅵ型、Ⅶ型によくみられることが知られています。
音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえない状態を難聴といいます。
難聴にはいくつかのタイプがあり、内耳やその奥の神経(聴神経)に問題が生じることによっておこるものを感音性難聴といいます。
ムコ多糖症ではムコ多糖(グリコサミノグリカン)が内耳にたまることにより、感音性難聴をおこすことがあります。関節が固くなり、関節の動きが制限されている状態を関節拘縮といいます。肘や肩の関節に拘縮がみられる場合は、バンザイをすることが難しくなります。
ムコ多糖症では関節を構成する軟骨・骨組織にムコ多糖(グリコサミノグリカン)がたまることで手指、肘、肩、膝、足首の関節などに拘縮をおこしやすくなります。脳には血液脳関門と呼ばれる、脳に必要な物質以外の異物が脳内に簡単に入らないようにする仕組みがあります。
酸素や栄養分などの必要な物質は脳の毛細血管から脳内に取り込まれますが、細菌や化学物質は取り込まれないようにして、脳を守っています。
薬などの物質は通常は血液脳関門を通過することはできませんが、近年、血液脳関門を通過させる技術も利用されるようになっています。ムコ多糖症は、ライソゾームの中でムコ多糖(グリコサミノグリカン)を分解する酵素が欠損、またはその働きが弱いことによりムコ多糖が細胞の中にたまってしまい、さまざまな症状が生じる病気です。
酵素活性測定は、血液や細胞の中の酵素の働きを測定して、欠損または働きの弱い酵素を特定することで、ムコ多糖症であるか、また、どのタイプのムコ多糖症であるかを診断するための検査です。さ行
中耳炎にはいくつかのタイプがあり、急に発症して発熱や耳の痛み、耳漏(耳だれ)がみられるものを急性中耳炎といいます。
これに対し、発熱や耳の痛みは伴わないものの、滲出液(しんしゅつえき)が中耳にたまるものを滲出性中耳炎といいます。
ムコ多糖症ではムコ多糖(グリコサミノグリカン)が耳管(中耳と鼻やのどの奥をつなぐ器官)にたまることにより、滲出性中耳炎をおこすことがあります。心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の四つの部屋に分かれています。
全身から心臓に戻ってきた血液は右心房が受け取った後、右心室から肺に送り出されます。
また、肺から心臓に戻ってきた血液は左心房が受け取った後、左心室から全身に送り出されます。
心房と心室の間、および心室から肺動脈または大動脈への出口には「弁」があり、血液の逆流を防止しています。
なんらかの原因によって弁が正常に働かなくなり、血液の流れが妨げられたり、血流が逆流したりしてしまう状態を心臓弁膜症といいます。
ムコ多糖症ではムコ多糖(グリコサミノグリカン)が心臓の弁にたまることにより、心臓弁膜症をおこすことがあります。血液の中にある血球には赤血球、白血球、血小板という3種類の細胞があります。血球の3種類の細胞は、造血幹細胞からつくられています。造血幹細胞は骨髄とさい帯血に存在します。
た行
中枢神経系は脳と脊髄からなり、末梢神経系(脳と脊髄以外の神経系)から伝えられた情報を受け取り、整理・判断して全身に指令を発信する役割を担っています。
中枢神経系に障害が生じることによっておこる症状を中枢神経系症状といいます。
ムコ多糖症ではムコ多糖(グリコサミノグリカン)が中枢神経系にたまることにより、中枢神経系症状をおこすことがあります。
ムコ多糖症にみられる中枢神経系症状として、知的な発達の遅れ、行動の異常、睡眠障害、けいれん発作などがあります。
中枢神経系症状の有無とその重症度は、ムコ多糖症のタイプによって異なります。音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえない状態を難聴といいます。
難聴にはいくつかのタイプがあり、外耳から中耳までの音を伝える経路に問題が生じることによっておこるものを伝音性難聴といいます。
ムコ多糖症では滲出性(しんしゅつせい)中耳炎を繰り返すことや、中耳に存在し、鼓膜の振動を内耳に伝える役割を担う耳小骨が変形することによって伝音性難聴をおこすことがあります。な行
は行
お腹の臓器がお腹の外に飛び出した状態をヘルニア(脱腸)といいます。
ヘルニアのうち、大きく膨らんだおへその中に腸管が飛び出た状態を臍(さい)ヘルニア、脚の付け根の部分〔鼠径部(そけいぶ)〕の隙間から腸管が飛び出て膨らんだ状態を鼠径(そけい)ヘルニアといいます。
ムコ多糖症では臍ヘルニア・鼠径ヘルニアを発症・再発しやすいため、ムコ多糖症と診断される前にヘルニアの治療を目的とした手術を受けている場合があります。ま行
網膜は眼の一番内側にある薄い膜で、フィルムの役割を果たしています。眼球の中に入ってきた光は網膜で像を結び、視神経を通って脳に伝達されます。
なんらかの原因によって網膜の視細胞および色素上皮細胞に変性が生じると、夜盲や視野狭窄(きょうさく)、視力低下がおこります。
遺伝子の変化を原因として網膜色素変性が生じた状態は網膜色素変性症と呼ばれ、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)において「指定難病」に指定されています。
ムコ多糖症では網膜色素変性症と類似した網膜の色調変化を認め、夜盲や視力低下を呈することがあります。
や行
ら行
体の中でいらなくなった物を取り込んで分解する役割をもつ、細胞の中の小器官です。
わ行
その他
性染色体のうち、X染色体上に変異した遺伝子のある場合に発症します。発症の仕方は、男性と女性とで異なります。
男性(性染色体はXY):X染色体上に変異のある遺伝子をもつ場合、必ず発症します。
女性(性染色体はXX):2本あるX染色体のどちらかに変異のある遺伝子をもつ場合、症状があらわれない「保因者」となります。※
蒙古斑は通常、生後1週から1カ月ごろまでに背中や腰、お尻に「青いあざ」としてみられ、5、6歳までに消失します。
通常の部位以外にみられる蒙古斑を異所性蒙古斑といい、ムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅵ型によくみられることが知られています。
ムコ多糖症Ⅱ型にみられる異所性蒙古斑の経過は、通常の蒙古斑よりもゆっくりです。薄くなり始めるのは学童期に入る頃で、12~19歳でも淡く残りますが、20歳代でほぼ消失します。
Ochiai T, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 21(8): 1082-1085, 2007. (PMID: 17714129)